2018年度版「コンド購入の教科書」

バンコクのコンドミニアム価格と地価推移

タイ中央銀行が2008年3月から継続調査しているコンドミニアムと地価の最新データが次のグラフである。

統計を取り始めてからまだ10年弱のデータしかないが、2009年1月の指数を100とすると、直近の2017年8月のそれはコンドミニアムが168.4、地価が169であり、いずれも9年ほどで約7割の上昇だ。

これを見る限り、全体としてバブルを懸念するような水準とは思えないし、タイの主だった調査機関も現時点でバブルの兆候はないと判断している。

しかし、実際のバンコクコンドミニアム市場で何が起きているかというと、消費者の住宅購入意欲や需要の伸び悩みによる販売不振、家計債務の増加に危機感を持った銀行による住宅ローンの与信却下によるキャンセル続出で、バンコク全体の供給量でマジョリティを占める郊外の市場で供給過剰が続いている。このグラフでも、この1年ほどコンドミニアム価格も地価も全体としては横ばいであることから、その地合いの悪さは見て取れる。

ところが、多くのデベロッパーが売れ行きの悪い郊外からバンコク都心部に開発の中心をシフトした結果、CBD(ビジネス中心街)の地価が急上昇し、30万バーツ/㎡を超すいわゆるスーパーラグジュアリーと呼ばれる高級コンドミニアムが続々と売り出されるようになった。

すなわち、水面下では都心部と郊外というマーケットの二極化がさらに進んだというのが実態だ。その結果、CBDの高級プロジェクトでも最近は供給過剰気味になりつつあり、市場では物件の選別化が始まっている。

次のグラフはコリアーズインターナショナルのリサーチ結果だが、最近売り出されたコンドミニアムの販売達成率を見ると、30万バーツ/㎡を超える高額プロジェクトが物件によっては相当苦戦しているのがわかる。

さて、著書の「バンコク不動産投資」でも冒頭に書いたことだが、海外不動産投資では投資の「入口」が最も重要だ。つまり、海外で物件購入段階で失敗したらリカバリーは困難だ。失敗しないためには次の原則と戦略を常に意識しておいてほしい。

失敗しないための2つの基本原則

これまでの日本各地での不動産投資セミナーで、筆者が繰り返し念押ししてきた注意事項が2つある。これは今でもまだ変更する必要はないと思っているし、バンコクでコンドミニアムを購入する際の基本ルールだ。

1.30平米以下の狭小ユニットは買ってはいけない

購入総額が大きくならず多くの消費者に売りやすいというデベロッパー側の一方的都合だけで、バンコクではこれまで大量の狭小ユニットが供給されてきた。その結果、郊外、都心部を問わず小さな1ベッドルームが市場に溢れ、抜群のロケーションやハイスペックの物件でもない限り、空室リスクが高くなっている。

日本人投資家で失敗している人の場合、東京や大阪など、日本のワンルーム投資の感覚で25㎡もあれば十分貸せると勝手に判断して購入してしまうケースだ。

しかし、バンコクの外国人エクスパットの大半は、日本でいうコンパクトマンション以上に住む。タイ人ミドルクラスに貸す物件に投資したいのなら30㎡以下でもいいが、それでは効率が悪い。

我々の場合、企業駐在員だけでなく現地採用やロングステイヤーを含む日本人エクスパットがテナント対象だということを忘れてはならない。

従って、1ベッドルームに投資する場合でも、最低35平米、できれば40平米台が理想である。そしてもし予算が許すなら、さらに希少性が高い2ベッドルームに手を伸ばすべきだ。

2.サブアーバン(郊外)では買ってはいけない

郊外では建設用地が簡単に取得できるので、デベロッパーは将来の新線沿線を中心に多くの新規プロジェクトを売り出してきたが、購入者が中低所得層ということもあり、銀行の住宅ローンが借りられないケースが多発し、キャンセルによる販売在庫の積み上がりが今も問題になっている。

パープルライン沿線のラタナティベートからセントラルにかけて、そしてランシットクローング1-7などは販売在庫が今も急増中で危機的な状態になりつつあるとの報告もある。

また、来年以降は新線のオレンジライン、イエローライン沿線に人気が集まるというのが大方の予想だが、日本人エクスパットはそういうところに住まないし、住宅マーケット全体がスローダウンしている今、外国人需要のない郊外は避けておくべきだと筆者は考えている。

成功のための3つの基本戦略

最近の都心部地価高騰で、新規プレビルドの販売価格も短期間で相当値上りした。これは将来の値上り余地を多分に織り込んでしまったということでもあり、プリセールで“バイジョーング(購入予約権)”を買い、竣工引き渡し前に転売して儲ける、タイ語でいう“ゲンガムライ”投資は妙味が薄らいできている。

すなわち、プレビルド物件を購入する場合は、竣工後引き渡しを受けて賃貸運用する覚悟がなければ、リスクに見合わなくなってきているということでもある。

1.新規プレビルドと価格乖離が大きい築浅中古物件を狙え

新規プロジェクトの売出価格が急上昇する都心部では、築浅中古や数年前に売り出され、現在建設が進む物件のバイジョーングのリセール価格にタイムラグが発生する。

次の表はプラスプロパティのデータであるが、シーロム、セントラルルンピニ、スクムビットのように投資家に人気のある都心部でも、それらのリセール価格が3割近く割安になっているのがわかる。

また、次の表は調査機関のAREA(Agency for Real Estate Affairs)による2012年から2016年の4年間の地価推移調査結果だが、アソーク駅横のタイムズスクエアとトンローの土地の市場価格が年率16%以上と群を抜いて高い値上りなのがわかる。

さらに、4年毎に評価替えされる財務省の2016年度評価額と市場価格との差も3倍近くと極端に大きい。日本の路線価と同じで市場価格の値動きが速すぎると公的評価が追いつかないのだ。また、当然この2つの駅の間にあるプロンポンでも状況は同じと考えるべきだ。

NEXUSプロパティの最近の調査では、アソークからトンローにかけての一帯では特に地価上昇が激しく、この7年間の平均上昇率は年率19%であり、それに伴い新規プロジェクトの価格も年率9%で上昇してきたとのことだ。しかも、少なくとも年率10%以上の地価上昇が来年以降も続くという。

多くのデベロッパーがCBDに開発をシフトしたことで、タイ人の間で住宅地として特に人気の高いこのエリアで用地取得競争がますます激化しているのがわかる。

その結果、このエリアでの新規プレビルドと築浅中古物件との価格乖離は今後さらに広がることになる。

築浅中古物件は周辺の中古市場の動きに影響を受けるので、値上りの速度にタイムラグが出る。しかし、建設用地不足で新規供給がますます難しくなる中、必ずこういう人気ロケーションの中古価格は上方修正され、やがて極端な出遅れが解消されることになる。

結局のところ、不動産は最後はロケーションなのである。

2.プレビルド方式の弱点、竣工直前直後の投売りを狙え

軍部がクーデターで反政府運動を鎮圧し政局が安定した2014年5月以降、外国人投資家が投資を再開したタイミングに合わせ、バンコク都心部では新規プレビルドプロジェクトが堰を切ったように大量に売り出された。そして来年以降、それらが続々と竣工引き渡しを迎える。

しかし、1、2年前からのデベロッパーの都心への開発シフトにより、CBDの高級プロジェクトも最近は供給過剰気味になりつつある。

さらに、価格高騰で投資利回りが下がってしまい、かつ最近のバーツ高で物件の割安感も薄らいできたために、これまで買い漁ってきた香港やシンガポールの外国人投資家にとってバンコク不動産の魅力は薄らぎつつある。

その結果、今よりかなり地価が安かったころに売り出されたCBDの物件であっても、ゲンガムライ(購入予約権の転売)目的の投資家が竣工間近になってもなかなか転売できないという事態が起こりつつある。また、金融機関の厳しい与信基準が続く中、住宅ローンを借りられず、引き渡しを受けられない購入者も出てくるので、こういう連中からの失望売りや投売りがこれから出てくる。

すなわち、数年前に売り出された優良プロジェクトが、当時のプリセールに近い価格や場合によっては損切覚悟でこれから出てくる可能性が高く、これから買う人にとってはまたとないチャンスでもある。

ただし、どの物件でもこういう安値買いができるわけではない。逆にゲンガムライで利益を最大限にできるのも保存登記前の完成物件が実際に確認できる竣工直後なのである。

つまり、その物件の需給関係次第なのだ。例えば、今、まさに竣工引き渡しを迎えつつあるアシュトンアソークがそうである。1フロアに2ユニットしかない2ベッドルームは希少価値があり、今のスローなマーケット下でも高層階のリセールユニットは30万バーツ/㎡を超える売り手市場である。

それに対し、700ユニット近くもある30㎡台の1ベッドルームはその過剰感から、アソークで最高のロケーションにありながら失望売りや損切りの売りが出てきている。

ただし、アソーク駅周辺全体の住宅需要の観点から見れば、これは大したことのない数だと思う。それに、トンローやプロンポンにないアソーク固有の強みがオフィス街の中にあるという職住接近とマストランジットシステムへのアクセスの良さであることを考えると、アシュトンには近隣の競合プロジェクトであるミュニックやセレスには太刀打ちできないロケーションの優位があり、近い将来この過剰感は解消されるはずだ。

そして、今はこういうのが安く拾えるチャンスなのである。

3.日本人駐在員に貸せるロケーションと物件を選べ

NEXUSプロパティのコメントをそのまま引用すると“タイ人が最も住みたがる住宅地がアソークからトンローにかけてであり、その分地価の値上りも速い”ということだ。職住接近のアソーク、銀座のような高級ショッピングエリアのプロンポン、表参道のように洒落た街並みのトンロー。そして、そこのタイ人大家が一番欲しがるテナントが日本人駐在員だ。

従って、郊外物件など買って入居者募集に苦労するくらいなら、少しぐらい高くても予算さえ許すなら日本人駐在員が多く住むエリア、タムレ・トーングに投資対象を絞り込むべきである。

そのためには、日本人駐在員がどんなコンドミニアムを選んでいるのか、そのトレンドを知っておかなければならない。プラスプロパティのレポートを参考に筆者の考えを入れながらその要点を以下にまとめた。

1.外国人に住宅地として特に人気があるのがスクムビット通りである。その最大の理由がB  TSスカイトレインの存在であるが、それ以外にも職場、学校、病院が近いという4つの重要条件が全て揃っているのである。その中でも大多数の日本人たちは、アソークからエッカマイにかけてのミドルスクムビットを好む傾向にある。特にスクムビット24、31、39、49、55が人気があり、その次がスクムビット23、26、36、38、53、そしてエッカマイ通りである。ただし、最近はプラカノーンからオンヌットも人気が出てきている。

2.ほかのアジア人と同様、日本人も同じエリアに集団で住む方が安全だと思う傾向がある。その結果、トンローなどの人気エリアでは住人全体の半分以上が賃借人であるが、実はその賃借人の半数以上が日本人というように、特定のエリアに集まってくる。

3.白人と日本人のニーズの違い:ヨーロッパやアメリカ人は広々としたシンプルな内装の部屋を好む。つまり、家主が内装装飾したものより部屋のデコレーションは自分の好みに合わせてやりたがる。また、マネージャークラスの欧米人は古くても2ベッドルームで100㎡以上のユニットに住みたがるし、3ベッドルームだと150㎡以上を要求する。さらに、単身者でも50㎡以上の部屋に住みたがる。一方、日本人は家主が家具家電を買い揃え、いつでも住める状態にきれいに内装装飾されたFully Furnishedの部屋を好む。また、あまり大きな部屋を好まず、単身者の場合、40㎡から50㎡あれば十分満足するし、家族同伴のエクスパットの場合でも2ベッドルームを選択することが多い。

4.日本では賃貸物件を家具なしで貸すことから、日本人家主はFully Furnituredによる賃貸の経験がほとんどない。その結果、自分で家具購入や装飾をやってしまうというミスを犯す。素人のセンスではデザインに調和がなく魅力に乏しい。その結果、空室リスクが高くなる。

これは特筆すべきことだが、タイのインテリアデザイナーには非常に優れたセンスの人が多いというのが筆者の正直な感想だ。部屋に合ったビルトインの家具を自分でデザインし、製作据え付けまで手配してしまう彼女達(あまり男性はみかけない)は、単なるインテリアコーディネーターとはその力量が違う。

特に競争が激しい1ベッドルームの場合、他の部屋と差別化して日本人に貸したければ、優秀なデザイナーを使い、たとえ新築であってもリノベーションをするべきである。

2018年のバンコクコンドミニアム市場について

筆者がこの原稿を執筆しているのが2017年10月末であるが、来年のバンコク都心部のコンドミニアム市場では、新規プロジェクト売出価格の上昇が続くだけでなく、慢性的な供給過剰状態も同時並行で続くと思う。

現在でもバンコク全体でコンドミニアムの販売在庫が約37,000ユニットもあるといわれているにもかかわらず、下のグラフにあるように成長を続けなければならないデベロッパーは今も新規供給量を増やし続けているからだ。

その結果、先の「プレビルド方式の弱点、竣工直前直後の投売りを狙え」で書いたように、来年以降都心部で高級物件が続々と竣工引き渡しを迎える中、増え続ける新規供給もあって、ゲンガムライ目的で買ったが転売できなくて焦った投資家や、資金繰りがつかない購入者から の投売りやキャンセルが増えてくる可能性が高い。

従って、都内の一等地、特に今後も地価上昇が確実視されているアソークからトンローでバイジョーング(購入予約権)を安く拾える久しぶりのチャンスの年になるのではないかと筆者は思うのだが…。

最後に、ポジショントークをしないニュートラルなリサーチで定評のあるAREAが出した、来年の市場予想から興味深い項目を抜粋しておくので、参考にしてもらいたい。

1.上場企業とその系列会社を合わせた大手デベロッパーのマーケットシェアはさらに増加する。同時に海外のデベロッパーと提携するタイのデベロッパーも増える。(注:この後、野村不動産、阪急不動産、東急電鉄、住友林業と日本の大手が続々とタイのデベロッパーとJVを組んでバンコク市場に参入した)

2.中国や日本からの外国人投資家が増加する。一方、海外に出かけて行ってマーケティングをするタイのデベロッパーもさらに増える。

3.物件価格上昇で投資金額が大きくなり過ぎた、供給過剰で空室リスクが高くなった、そして競争激化でリターンも小さくなったことから、ゲンガムライ(購入予約権の転売)目的で不動産を購入する投資家は減少していく。

4.家計債務の額はさらに増加し、厳しい金融機関の与信基準は今後も続く。

5.政府によるインフラ整備計画がはっきりしてくる。特にオレンジラインとイエローライン沿線が注目され、新しい住宅開発が出てくる。

6.コンドミニアムは引き続き住宅開発の中で最も大きなシェアを占めるが、今後は将来性が高いロケーションだけに開発が集中する。

7.これからのコンドミニアム開発は共用部施設の充実に重点が置かれるようになる。例としてコーワーキングスペースや公園、パーティルームなど。

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