続々と参入する日系デベロッパー、武器は低コストジャパンマネー

日本の大手4社、バンコクに揃い踏み

日本の総合不動産デベロッパー大手4社といえば、いわゆる地所、三井不、東急、野村だ。最近はそれに住不を加えて大手5社ともいわれるが、先月、東急電鉄(東急不動産ではないが東急グループの中核)がバンコクのコンドミニアム市場に参入すると発表し、この大手4グループがバンコクで出揃った。

以下の表が住宅供給量で上位10社を占めるタイのデベロッパーであるが、日本の大手4社全てがこの10社のいずれかとJVを組んでバンコクのコンドミニアム市場に参入したことになる。これ以外にも東京のフージャース、ラ・アトレ、関西勢では信和、阪急が、九州からはアソーク駅前のホテル開発で西鉄が参入した。

では、何故最近になって続々と日本のデベロッパーがバンコクの市場に参入しているのか。数年前、地所と三井不がタイの不動産市場に参入したのを見て日経新聞がこんな記事を書いた。「今後マーケットの縮小が確実視されている日本の住宅市場から、大手デベロッパーは東南アジアの住宅市場に軸足を移し始めている」。

天井圏に入った日本の不動産市場

ところでここ数年、東京の不動産価格は円安とオリンピック効果で随分値上りした。日本では相変わらず個人投資家の間で不動産投資ブームのようだ。

しかし、筆者の元同僚たちは天井感が出てきたという。実際、その何人かは個人所有の土地やマンションを次々売却して投資の出口モードに入っている。そして筆者に「今度は東南アジアをやろうと思うのだが、バンコクはどうだ?」と聞いてくる。

つまり、デベロッパーも不動産投資を専門とする生保や外資系のアセットマネジャー達も日本の不動産に見切りをつけ、東南アジアに目を向けつつあるということだ。案外、日本の不動産市場はオリンピックを待たずに失速するかもしれない。

武器は超低コスト資金

しかし、ここにきて続々と日系デベロッパーがタイに進出してくるようになったのには、もう一つ大きな理由がある。タイは今、金融機関の与信基準が厳しくデベロッパーが新規プロジェクトを行うための開発ローン金利が6%だ。

一方、上場企業は直接金融で3%で資金調達できる。この差が非上場の中小デベロッパーのマーケットシェアを縮めている。

調査機関AREAによれば、住宅全体で中小デベロッパーのシェアはわずか23%にまで落ち込んだ。しかし今、大手デベロッパーでも激しい競争に直面していて、その命運を握る鍵が資金力となっている。

いくら上場企業といっても無尽蔵に社債や新株発行で資金調達できない。そこで日系デベロッパーなのである。マイナス金利政策を取る日本の資金調達コストは非常に低い。タイのデベロッパーにしてみれば競争に勝ち抜くために是非とも欲しい低コスト資金なのだ。

今、中国のデベロッパーもタイ進出を狙っている。しかし、彼らには超低コスト資金という武器がない。日系デベロッパーがここぞとばかりにタイのデベロッパーとJVを組んでタイに進出してきているのは、ビジネス戦略としては正しいように筆者は思うのだが…。

追加コメント:

2020年に入り、一部の日系デベロッパーを除き、日系デベロッパーの多くが、売れなくなったコンドミニアムからホテルやオフィスビル等の商業ビルの開発にシフトしつつある。

タイの大手デベロッパーの動きに追随しているだけなのだが、当面はコンドミニアムから撤退とまではいわなくても、積極的な開発は行わないということである。

これは、デベロッパーにとってはコンドミニアム事業規模の縮小でもあり、あまり前向きなことではないが、我々個人投資家にしてみれば、悪い話ばかりでもない。

既に投資物件を持っている人にとっては、しばらく市場が回復するのを待つしかないかもしれないが、数年前まで続いていたデベロッパー間のマーケットシェア争いに起因する供給過剰が、ここで一旦収束に向かって動き始めたのである。

この点、デベロッパーと投資家では利益が相反するところであり、供給が減り需給が引締まるというのは投資家にとってはウエルカムなのである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました