安いからと郊外物件を買ってはいけない

進行するキャップ・コンプレッション

バンコクポストに載った記事によると、最近はラグジュアリーコンドの投資家は賃貸利回りよりもキャピタルゲインを目的に買っていて、その結果、投資利回りの低下(キャップ・コンプレッション)が一段と進んできている。実際、バンコク都心部高級物件のネット投資利回り(CAM等の運営費用控除後)は3%と、5年前の半分になったとのこと。

情報ソースのJLLによれば、この数年間で家賃相場より物件価格の方が大きく上昇してしまったために、全体的に投資利回りが下がってきている。しかしそれでも、都内中心部ラグジュアリーコンドに関しては、タイ人富裕層と外国人投資家が中長期的なキャピタルゲインを見込んで、今も買い進んでいる。

その理由として、最近のタイ人投資家はバンコク不動産市場動向に関する詳しい情報を入手できるようになっていて、都心部では今後優れたロケーションの用地取得がますます困難になる、その結果、一等地の地価はさらに上昇し、コンドミニアムも値上がりすると考えている。

一方、シンガポールや香港の投資家にとっては、スーパーラグジュアリー級コンドは別としても、ラグジュアリーコンドの価格は今もまだ相当な割安感があり、利回りでもシンガポールの2%以下に比べればまだ魅力があるということらしい。

この記事から読み取れるのは、筆者が著書やブログで以前から書いてきたキャップ・コンプレッションが目に見えて起こっているということだ。5年前なら6%あった投資利回りが、今は3%にまで下がったということは、収益還元方式でいえば物件価値が倍になったということでもある。

利回り3%は要警戒

ただし、ネット利回りが3%ともなると、そろそろ警戒が必要な気もするし、正直、この先は分からない。従って、筆者なら20万バーツ/㎡を越すラグジュアリーよりもう少し価格の低いセグメントで、利回りもまだ5%位見込めるプロジェクトを探す。

例えば、人気のロワースクムビットであれば、駅からちょっと離れても管理のいい賃貸需要のある中古物件とか、未決定だがグレイライン始発駅になると注目されるプラカノーンとか、バンコクモールと副都心バンナーオフィス街がスカイウォークで直結されるウドムスクとか…。

投資の入口で失敗するとリカバリーできない

5年前にダウンタウンのロケーションのいいところでコンドミニアムを買った人は、その後の値上りで、あの時買っておいて正解だったと喜んでいるはずだ。

一方、5年前にバンコク郊外で将来の値上りを期待してアフォーダブルな普及価格帯のコンドミニアムを買った人は、その後の供給過剰による期待はずれの結果にがっかりしているかもしれない。

バンコクの市場構造を見誤り、首都圏全体が値上りすると思ってしまうと、投資の入口で失敗してしまうのである。

今も減らない家計債務と増えない中低所得層の収入。NPL(不良債権)の発生を恐れた金融機関が住宅ローンの与信基準を厳しくした結果、郊外では大量の解約が発生した上に、供給過剰で販売在庫が積み上がっている。

その結果、パープルライン沿線のように郊外物件はほとんど値上りしてない。もっとも、これでバンコクの不動産バブルが回避できているという一面もあるのだが…。

将来、マストランジット・システムがさらに整備されてくれば、いよいよ郊外型コンドミニアムにも投資のチャンスが出てくるかもしれない。

しかし、多分それはまだ何年も先のことだ。今、こういう物件を買ってしまうと、しばらくは打つ手もなくリカバリーが難しい。

アフォーダブルな物件ほど劣化が速い

バンコクのコンドミニアムは距離的に30キロも離れてないにも関わらず、郊外の5万バーツ/㎡からCBDの35万バーツ/㎡と新築価格に7倍もの開きがある。東京の場合、都心3区と30キロ圏にある千葉や埼玉との新築を比較してもこれほどの価格差はない。

筆者が複数の郊外廉価物件を実査して思うに、施工監理、使用する建材や造りの全てが安かろう、悪かろうのプロジェクトが多いのだ。

これは筆者の偏見かもしれないが、日本のマンションは廉価なものでも外壁は経年劣化の少ないセラミックタイル張りが一般的だし、ファミリータイプの場合、キッチンはシステムキッチン、そしてキッチンや洗面台の天板は人造石と一定のレベルを維持している。分譲である以上、木造アパート並みの安っぽい設備など使わないというスタンダードがある。

しかし、バンコクのコンドミニアムの場合、まさにピンキリでこのスタンダードがまだできてないように思う。その結果、バンコクの廉価物件は経年劣化も非常に速く、数年で古ぼけてくる。

追加コメント:

これについては、基本的に今も筆者の考えは変わってないが、実は最近のタイ人消費者の目が変わりつつある。

以前の廉価プロジェクトは、竣工して4、5年もするとどこか古ぼけてくる。例えば、ロビーなどはそのプロジェクトの顔でもあるのだが、デベロッパーが安っぽい建築資材を使って経費を節減した結果、傷みや陳腐化が数年で進み古臭くなるのである。

また、これはなにもない更地状態で購入するプレビルドの問題点でもあるのだが、モデルルームでいくら魅力的に見せても、悪質なデベロッパーは実際にはスペックダウンしたり、施工上の手抜きをするのである。

従って、当初期待通りのものが引渡されるのかどうか、実際には竣工するまでわからないし、だからタイでは、大手デベロッパーのブランドというのが非常に重視されるのである。

しかし、最近のタイ人消費者もこれらについて厳しい目を向けるようになってきている。以前のように、とにかく新築物件が安く予算内で買えればいいという単純な選択から、価格だけでなく自分たちのライフスタイルに合った間取りや共用部の充実度、経年劣化や陳腐化の少ないデザインや仕様であるか等、中古を含めていくつかの物件を比較検討して選択するようになってきているのである。

言い方を変えれば、不動産市場が買い手市場に移行した結果、デベロッパーは今までのように作れば売れるという中でのマーケットシェア優先の傲慢な立場から、顧客が満足する物件を開発しなければそのプロジェクトは売れない、という現実に直面しているのである。

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