バンコク コンドミニアム事情

バンコクのコンドミニアム市場はバブルなのか

1997年、バンコクの不動産バブルが崩壊した。それが発端となり世界経済にも多大な影響を及ぼしたアジア通貨危機、通称「トムヤムクン危機」が起こったといわれている。

そして、昨年6月、バンコクポストは「バブルトラブル」と題して天井感の出てきた香港や値下りが続く中国やシンガポールのコンドミニアム市場を例にあげ、バンコクもバブル崩壊が近いという記事を載せた。

その数日後、日経新聞もこの記事を日本で紹介していたが、ならば現在起こっているバンコクコンドミニアム市場の低迷は不動産バブル崩壊の前兆なのか?

ここに、調査機関AREAが最近公表した過去30年間に渡る地価推移を示す資料がある。1985年のバンコク首都圏の地価を1とした場合、11年後の96年にはなんと33.2倍にもなっている。確かにこの値上りは異常だ。97年に始まった下落は不動産バブルの崩壊といわれても仕方がない。

しかし、わずかその2年後の98年に底を打った地価は、その後17年間かけて25.9から47.7へと84%上昇した。つまり、この間の上昇は年率わずか3.7%なのだ。バブルというより、タイの経済成長に合致した順当な地価上昇であり、現状は首都圏全体として土地バブルを心配するようなものではないように思える。

一方、タイ中央銀行が2008年3月から継続調査しているタイのコンドミニアム指数の推移が次のグラフである。彼らが統計を取り始めてからまだ8年半ほどのデータしかないが、2009年1月の指数を100とすると、直近の2016年7月のそれは162.5であり、7年半で62.5%の上昇だ。つまり、コンドミニアム価格については年率6.7%の値上りということになるが、これもバブルを懸念するような水準とは思えない。

むしろ、ここで注目すべきは、バンコクのコンドミニアム市場は右肩上がりの上昇が続くマーケットであるということだ。楽観的なことはいわないが、少なくとも失われた20年と言われる中、長期低迷が続いてきた日本のマンション市場に比べれば、バンコクコンドミニアム市場の投資対象としての健全性は明らかだ。

最近は円安とオリンピック効果で東京の不動産価格も多少上昇しているが、円安が一段落しオリンピックも終われば、また長い低迷が始まるかもしれない。

要するに、東京には不動産価格が上昇するためのファンダメンタルズであるヒト、モノ、カネの流入があまり期待できないのだ。

一方、バンコクの場合、チットロムのセントラルワールドが暴徒の放火で焼け落ち、アピシット政権が倒れるまで長期間続いた赤シャツによる内乱、ホンダの工場などが全滅して経済不安が起こった2011年の大洪水、記憶に新しいところでは、2014年のクーデターによりインラック政権が倒れるまで続いた反政府運動等、事ある毎にコンドミニアム市場は低迷してきた。

しかし、マーケット自体が上昇トレンドにあるため、低迷している間でも上昇エネルギーが蓄積され、最後はその反動でそれまでの遅れを一気に取り戻そうとするかのように急上昇するパターンを繰り返してきている。

ここが既に黄金期を過ぎた日本の不動産市場と、常に国内外の投資家や実需層が購入のチャンスを狙っていて上昇エネルギーが充満するバンコク不動産市場との違いだろうと筆者は考える。

そして、現在のバンコクコンドミニアム市場はどうかというと、家計債務の増加に危機感を持った銀行による住宅ローンの貸し渋り、それに伴い販売在庫が積み上がった郊外の供給過剰、また、バンコク都内の物件でもタイ経済の低迷で住宅購入に慎重になったミドルクラスの買い控えが続く中、既に1年近くも市場の低迷が続いている。確かにこれは危惧すべき状況だが、だからと言ってバブル崩壊の前兆とは思えない。

こんな状況の中でもタイ人富裕層や外国人等の経験豊富な投資家達は、今もCBD(中心ビジネス街)やダウンタウン(都内中心部)の高級物件を買い続けている。筆者はエコノミストでもないし、タイ経済の今後を予測することなどできない。

しかし、いつか景気は上向き始める。そしてその時には、彼らが今粛々と買っているバンコク都内中心部の希少性の高いコンドミニアムこそ、まず最初に一段高になると考えている。

ところで今年の第2四半期(4-6月)、タイの実質GDP成長率は前年同期比3.5%であった。タイ経済が少しずつだが不況から抜け出し始めている兆候とも思える。そろそろまたコンドミニアム市場のリバウンド時期が近づいているのかもしれない。

失敗しないための3つの基本原則

さて、ここで話は変わるが、これまでの日本各地での不動産投資セミナーで、筆者が繰り返し念押ししてきたことが3つある。これは今でもまだ変更する必要はないと思っているし、現時点ではコンドミニアム投資の「3つの基本原則」だと考えている。

また、投資目的だけでなく、たとえ自己居住目的であっても今後バンコクでコンドミニアムを購入する際には、是非次のことに留意して頂きたい。

1.30平米以下の狭小ユニットは買ってはいけない

購入総額が大きくならず多くの消費者に売りやすいというデベロッパー側の一方的都合だけで、バンコクではこれまで大量の狭小ユニットが供給されてきた。その結果、郊外、都心部を問わず小さな1ベッドルームが市場に溢れ、今後、入居者募集も売却もままならないという事態に直面する可能性が高い。

従って、1ベッドルームに投資する場合でも、最低35平米、できれば40平米台が理想である。そしてもし予算が許すなら、さらに希少性が高い2ベッドルームに手を伸ばすべきだ。

2.サブアーバン(郊外)では買ってはいけない

郊外では建設用地が簡単に取得できるので、デベロッパーは将来の新線沿線を中心に多くの新規プロジェクトを売り出してきたが、既に供給過剰。さらに、購入者が中低所得層ということもあり、銀行の住宅ローンが借りられないケースが多発し、販売在庫が今も積み上がり続けている。

次の表からも分かるように、今後、特にノンタブリー、サムットプラガン、パトゥンタニー等のパリモントン(近隣3県)では市場低迷が長引く可能性が高い。

一方、次の表はDDプロパティが最近公表した住宅を探すタイ人が注目する駅のベスト10である。そして、この中で四角で囲った駅が日本人が投資してもよい駅だが、ダークホースともいえるウドムスクを除き、基本的にダウンタウンかオンヌットのようなミッドタウンフリンジに限られる。

さらに、この中でもプルンチットやアソークといった既存のCBDだけでなく、将来副都心となるであろうバンナーにも直結するBTSスクムビット線沿線こそが投資の王道だと筆者は考える。(注:何故かここにプロンポンが入ってないが、タイ人にとっては住宅地というよりエムクオーティエに代表されるように商業地のイメージが強いのかもしれない)

3.新規プレビルドと中古物件の価格乖離が大きいエリアにある築浅中古を狙え

タイ人の新築偏重もあって、一般的にCBDやダウンタウンでは中古物件に割安感がある。特にアソークやトンロー、プロンポンのように土地の値上りが速いところほど、新規プロジェクトに比べて中古価格の値上りが著しく出遅れる傾向が強い。

さて、次の表は2012年から2016年の4年間の地価推移だが、アソーク駅横のタイムズスクエアとトンローの土地の市場価格が年率16%以上と群を抜いて高い値上りをしているのが分かる。

また、4年毎に評価替えされる財務省の2016年度評価額と市場価格との差も3倍近くと極端に大きい。日本の路線価と同じで市場価格の値動きが速すぎると公的評価が追いつかないのだ。また、当然この2つの駅の間にあるプロンポンでも状況は同じと考えるべきである。

その結果、この3つのエリアでは地価上昇に伴う用地取得コストの高騰が即座に新規プロジェクトの販売価格に反映されることになる。それに対し、竣工済の中古物件は周辺エリアの中古市場の動きにも大きな影響を受けるので、値上りの速度にかなりのタイムラグが出る。

しかし、建設用地不足で都心部の新規供給がますます難しくなる中、必ずこういう人気ロケーションの中古価格は上方修正され、やがて出遅れが解消される。つまり、中古物件のキャップ・コンプレッション(収益還元利回りの低下)が起こるのだ。

ただし、筆者は新築プレビルドを否定し、ただやみくもに築浅の中古を買えと言っているわけではない。トンローのRHYTHMスクムビット36-38などはいい例だが、優れたロケーションとスペックを持ちながらリーズナブルな価格設定の新規プロジェクトも当然ある。

特に竣工前に転売して儲けるゲンガムライを狙う場合は、これはというプロジェクトにプリセール段階で買いに入るべきだ。そのためには転売しやすい優れたプロジェクトを選び取る力が必要になってくる。つまり、さらに高度の能力が試される。

ブレない投資クライテリア(投資判断基準)

筆者の本、「バンコク不動産投資」やブログの中でも書いてきたことだが、バンコクで300万バーツ、1,000万円程度の1ベッドルームを購入するのであれば、わざわざリスクのある海外不動産投資をするよりも東京のワンルームマンションに投資した方がよい。

1,000万円の物件だと表面利回りが5%として年間50万円。わずか月額4万円強の家賃収入を得るために、わざわざ面倒で為替リスクや空室リスクもある海外不動産投資をするのは効率が悪すぎるというのが筆者の考えだ。やるならもっと資金を増やしてから始めた方がいい。

それもあってか、わずか500万円で新築コンドミニアムが買える、というキャッチフレーズの郊外物件目当ての人達は私のセミナーにはこない。きてくれるのは若くても30代半ばで、今までタイを訪れたことがないという人などまずいない。タイが好きで、かつ投資対象としても魅力的な海外資産だと思うのでバンコクでコンドミニアム投資をしてみたいという人がほとんどだ。

ただ、こういう人達も大半が海外不動産投資は初めてだ。従って、最初から大きく投資するのではなく、いわゆるエントリーレベルの投資物件を探している。

予算にして1,500万円を中心にせいぜい2,000万円位までといったところだ。つまりタイバーツでは500万から700万なのだが、これが結構厳しい投資クライテリア(投資判断基準)となる。

なぜなら、今の低迷しているマーケットにおいても、この価格帯で先に挙げた3つの基本原則をすべて満たす理想的な物件を探すのはそう簡単ではないからだ。

例えば、場所はトンロー、築3年以内の中古、日本人エクスパットに賃貸できる40平米以上の1ベッドルーム、管理状態がよくコンプライアンスがしっかりできていてAirbnbなどの違法民泊を禁止している物件、という高度な投資クライテリアを設定したとする。

トンローといえばソイ55(スクムビット55)がメインストリートだが、この周辺の築浅中古は既に平米20万バーツを超える。従って、40平米となると800万バーツ以上、管理のしっかり行き届いた人気物件だと1,000万バーツにもなってしまう。

こんな具合なので、当初の投資クライテリアに少しずつ修正を入れながら投資物件を探していくことになるのだが、それでも玉石混交のバンコクコンドミニアム市場で、自分の投資クライテリアを満たす物件を自力で探し出すのは簡単ではない。

バンコクは日本とは市場構造が違いネットで物件を探すのが主流であり、日本のように簡単に飛び込める駅前の不動産屋などないし、言葉の問題もある。

その上、タイには日本の宅建業法のような厳しい規制がないため、頼みのネット広告でさえも実際には存在しもしない囮物件が溢れていて、素人が物件探しをするのは困難を極める。

そして、その挙句の果てに、どうしてこの物件を買ったの?と思わず聞きたくなるようなコンドミニアムを買ってしまっている人が少なからずいる。

ここが海外不動産の難しいところでもあるのだが、日本とは勝手が違うバンコクの不動産市場の中でいくつも物件を見て回るうちに、わけが分からなくなり、当初設定していた投資クライテリアから相当ブレてしまうのだ。そして、買った後になって、最初に自分が買おうと思っていたのとは全くかけ離れたタイプのコンドミニアムを買ってしまったことに気づいてももう遅い。

従って、バンコクのコンドミニアム購入で失敗しないためには、まず先に挙げた3つの基本原則に従い、かつ仲介業者のセールストークなどに振り回されて簡単にブレたりしない確固たる投資クライテリアを持たなければならないのである。

最後に、バンコクはアセアンの中では最もマーケットの透明性が高い不動産市場の一つといわれている。しかし、それでも日本とは構造や特性が大きく違い、危険も一杯だということを覚えておいてほしい。

追加コメント:

この特集寄稿記事の中でDDプロパティが公表した2016年のタイ人が住宅を探すBTSの駅、人気ベスト10の表を入れた。

そして、同じくDDプロパティが2020年に入って公表した、2019年に検索が多かったBTSの駅、人気ベスト5が以下である。これらを比べて見ると、一つのトレンドがわかる。

1.オンヌット

2.アーリー

3.ラーマ9

4.バンナー

5.サパンクワーイ

すなわち、価格高騰により、CBDのアソークがベスト5から脱落したが、タイ人ミドルクラス以上の住宅需要のボリュームゾーンは、依然、CBD周辺のダウンタウンであるアーリーやサパンクワーイ、そしてミッドタウンのオンヌットやバンナーと、CBDまですぐに行ける職住接近重視は変わっていないのである。  従って、投資として見た場合、郊外の駅にはまだリスクがあるということでもある。

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