マイナス成長でも地価上昇は止まらない

2016年も終わりが近づき、今年のコンドミニアム・マーケットを振り返ると、新規供給が昨年比でマイナス成長と減速する中、投資家や実需層の興味が新築一辺倒から割安な中古物件にシフトした年でもあった。

現在のバンコクのコンドミニアム市場はといえば、今も中進国の罠に嵌って低迷するタイ経済、それにより、国内市場で唯一頼みの綱であったアッパーミドルクラスでも始まった様子見と買い控え。家計債務の増加を警戒する銀行のさらに厳しい与信基準により、住宅ローンが借りられない中低所得層によるキャンセル続出と販売不振。

一方で、これまでデベロッパーが見境なく供給を続けてきた結果発生した供給過剰と完成在庫の積み上りが続く。

そして、この影響をもろに受けているのが、タイ語でパリモントンと呼ばれる郊外市場だ。デベによっては売れ残り物件を2割以上も値下げしているものもあるが、郊外はしばらく回復しないだろう。

ところで、株式投資の発想でこういう安い郊外物件に逆張りで今底値で投資したら将来大きく値上りするのでは、と考える人がいるかもしれないが、それは違う。

ゴーイングコンサーンとして将来も企業活動が続くことが前提の株式投資と、竣工した時点で確実に建物の劣化が始まる不動産投資とでは、投資対象の性質が根本的に違うからだ。

入居者も見つからないまま郊外物件を保有し市場回復を待っている間に、建物は急速に劣化減損する。一方、経年劣化どころか成長に伴って第三者割当で増資していける株式に対して、実物資産の不動産は文字通りどこにも持っていけないし増やすこともできないのである。

すなわち、増やすことができない以上、用地不足で新規供給がこれからもっと難しくなるバンコク中心部のロケーションで、しかも更なる需要増が見込める物件、つまりキャップ・コンプレッション(利回り低下)が起こる不動産に投資してインカムとキャピタルゲインの両方で建物劣化の減損に対抗する、という順張り投資が不動産投資なのである。

ところで、筆者がバンコクの不動産市場に比較的楽観的なのは、バンコクの地価の割安感とその推移にある。最近、都内中心部チットロム駅前の土地が、大手デベロッパーのSCアセットに190万バーツ/4㎡(約520万円/坪)で売却され、史上最高取引事例となった。

それでも、市場には天井感など全く出てないし、東京で500万円/坪では都内の主だった駅前の土地などまず手に入らない。以下は本年度の都心5区の平均公示地価だが、チットロムの一等地が渋谷区や新宿区の平均地価の半分程度でしかない。

一方、タイでは来年から土地に対して税金を課すことが決まったが、そんなことでダウンタウンの立地条件のいい土地は出てこないし、地価も下がらないというのが市場のコンセンサスでもある。

従って、これからもデベロッパーは用地不足の中、さらに高騰する用地取得を続けながらも立地に優れたプロジェクトの供給を続けていくしかないと筆者は考える。

ビッグ10と呼ばれる大手デベロッパー、レイモンランドやペースといった高級プロジェクトのエキスパート的なデベロッパー、そしてシンハーやCPといったコングロマリット系のデベロッパーが熾烈な競争を繰り広げるのが、CBDのハイライズ大型プロジェクトだ。

そして、ダウンタウンのローライズ中高級プロジェクトに次々と参入してくる中堅デベロッパー。こんな状況下で向こう5年位先を見て投資するとすれば、“開発用地不足で新規供給が難しくなるエリアにあり、将来アッパーミドルの実需層が買い上がってくるハイクラス物件”という投資クライテリアを持って探せば、おのずと自分の予算に合った投資対象を見つけられるはずだ。

追加コメント:

正直なところ、この原稿を書いた2016年末時点で、そのわずか2年後にコンドミニアム市場が失速し、事実上の値下りが始まることなどは予想もしていなかった。

しかし実際には、リーマンショック以降、10年以上にわたり上昇が続いてきたバンコク不動産市場に波乱が起こったのである。

その原因については著書で詳しく分析し解説しているのでここでは書かないが、2016年に上梓した最初の著書で書いた、“開発用地不足で新規供給が難しくなるエリアにあり、将来アッパーミドルの実需層が買い上がってくるハイクラス物件”という投資クライテリアを持って探せ、というところだけは、今でも変わっていない。

ただし、その後の市場全体の価格高騰で、アッパーミドルクラスが購入可能なエリアがダウンタウン(都心部)からシティフリンジやミッドタウンへと変わってきたのである。

筆者は仲介業者ではないので、コミッションの大きい高額物件を買えとはいわないし、今は日本人駐在員に貸せる物件を買えともいわない。

むしろ、5,000万円以上もするような高額物件よりもボリュームゾーンであるアッパーミドルクラスが買える価格帯で、賃貸運用面においても今後は減少の一途をたどる大手企業の日本人駐在員から離れて、脱日本人駐在員に方針転換することを勧めている。

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