タイ不動産投資、風が吹けば桶屋が儲かる?

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大手デベロッパー、中国恒大集団の倒産危機

中国屈指の大手不動産デベロッパー、恒大集団がほぼ倒産ともいえる状況になっている。ここが破綻すれば負債総額が30兆円以上ともいわれる大型倒産になるが、実はここだけでない。南通三建集団や河南建業集団といった他の中国大手デベロッパーもコンドミニアムの販売不振で危機に陥っているという。

実際、中国ではこれまで需要をはるかに超えるコンドミニアムが建設され続け、その供給過剰の度合いはタイのそれとは比較にならない。しかし、今まで不動産バブル崩壊を経験したことがないことから、中国の金持ちの多くは資産形成手段としてコンドミニアムを買い続けてきた。しばらく経つと値上りするから、資金に余裕があればさらに買い増しをする。従って、中国の金持ちはその資産の大部分を不動産に依存している人が多い。

ところで、筆者が本で読んだところでは、アジアでも中国人の不動産信仰は特別だ。日本では法律で新築から1年以上経ったマンションは未入居でも中古となる。しかし、中国では一度も人が住んだことがなければいつまでも新築扱いであり、買った後は鍵を閉めたままにして誰にも入らせず、じっと値上りを待つのだそうだ。

しかし、ここにきて不動産価格高騰を嫌った中国政府の締め付けにより住宅がさっぱり売れなくなった。中国人にとって財産のベースでもある不動産市場で異変が起こりつつあるのだ。

デベロッパーの実質値下げがじわじわと進むタイ不動産市場

一方、タイのコンドミニアム市場が今どうなっているか少し解説する。これは不動産リサーチのナイトフランクによる、デベロッパーが抱えている販売在庫の売値をじわじわと値下げしているというグラフである。昨年の第4四半期から目に見えて実質値下げを始めていて、今もそれが続いているのがわかる。

特にCBD(中心部ビジネス街)の高額物件については、第1四半期に比べて第2四半期は9.8%も値下りしたということであり、このグラフで見る以上に実際の値下りは大きい。さらに、バンコク賃貸市場では家賃が2割、3割と下がっただけでなく、空室率もかなり上がってきている。

中国人がタイ不動産を爆買いした2016年と2017年

さて、2015年後半に始まり、2018年前半まで続いた中国人投資家のタイ不動産投資ブームにより、バンコクやパタヤなどで大量のコンドミニアムが買われた。これは、そのピーク時であった2017年に外国人が購入したコンドミニアムのシェアを筆者がグラフにしたものである。

当時は中国政府が外貨流出になる海外不動産投資に目を光らせていたこともあり、香港経由で投資された例も多かったので、冒頭のグラフにある中国本土と香港からの合計送金額を見ると、2017年の最盛期には、外国人購入額全体の4割以上が中国人投資家であったことがわかる。

ちなみに、タイの法律では、外国人が不動産を購入する場合、海外から直接外貨送金して全額現金で買わなければならない。従って、当時多くの中国人投資家は値上りで含み益の出た中国国内の自宅や投資物件を担保に中国の銀行から融資を受けて購入したはずだ。

しかし、中国全土で不動産価格が値下りし始めた今、次第に担保余力がなくなってきている。すなわち、国内で保有する不動産の価値が下がるのに、住宅ローンの額は減らないという逆回転が始まっているわけである。そうなるとまず考えるのは、抵当に入ってないタイのコンドミニアムを先に処分して債務を減らそうとする。

狙いは中国人投資家が投売りする築浅中古

特に2016年、2017年の2年間が、中国人投資家がバンコクやパタヤ、プーケットなどで不動産をもっとも買い漁っていた時期であるが、タイはプレビルド販売(先に購入予約して、数年後に竣工してから引渡しを受ける)なので、プリセール時に購入予約して買ったとすると、そのプロジェクトの大半が2018年から2020年に竣工引渡しされている。

実際、タイの大手デベロッパーであるサンシリの最近の発表によると、彼らの竣工済プロジェクトの引渡しに関して「外国人顧客を国・地域別に見ると、中国が全体の50%を占め、香港が30%、台湾および欧米が20%を占める」ということである。つまり、中国と香港でなんと外国人購入者の80%を占めているのである。

しかし、中国人投資家の多くが当初目論んでいた、毎年急増し年間1,000万人以上にもなっていた中国人観光客にホテルとして貸して高利回りで運用する、という計画は、コロナが始まって以降、中国人観光客ゼロ状態となり、完全にあてが外れてしまったのである。

その結果、バンコクでは中国人投資家が保有する築1年から3年の築浅物件の多くが、入居者もいないまま新築未入居のままになっている。そして、今後これらが投売りで出てくる可能性が高いのだ。

不動産市場と株式市場との違い

ところで、株式投資にはナンピン買い下りという手法がある。流動性が高い株式市場では相場がどんな下降局面であっても売り手と買い手が常に存在するので、買い下りながら平均コストを下げていく投資法だ。

しかし、これは個別性のある不動産には通用しない。むしろ、Don’t catch a falling knife. といって、相場の下落が完全に終わるのを確認するまで買うのはよせ、というのが不動産投資の格言である。

すなわち、不動産は流動性が低いだけに一旦価格が急降下し始めると、あっという間に買いの手が引っ込んでしまい、どこまでも落下していくのが不動産市場であり、ここまで下がればもう大丈夫だろうと中途半端なところで手を出すと、金額が大きいだけに大怪我をする。

まさに日本の不動産バブル崩壊の時がそうであり、その経験もあって筆者も著書や経済誌への寄稿文で、2019年以降は「休むも相場なり」とタイのコンドミニアム市場が大底を打つまで様子見することを勧めている。

しかし、もし中国政府が何もせず、このまま中国の不動産バブルが崩壊するとすれば、中国人の投売りでいよいよタイ不動産の大底がくるかもしれない。その場合、これはと目を付けたプロジェクトにターゲットを絞って売物件情報を注視いれば、来年あたり格安で投売物件を掴める可能性は高いと思っている。

ちなみに、これまでは相場が下落すると、待ってたとばかりに中国人投資家が底値をさらっていくのがお決まりのパターンであった。しかし、今回ばかりはその逆が起こりそうである。まさに風が吹けば桶屋が儲かるで、中国不動産バブル崩壊のおかげで、我々にとってタイ不動産底値買いのチャンスがくるかもしれないのである。

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