3月2日に飛ばなかったタイ航空、次のD-デイは5月12日

先月、「3月2日、タイ航空はいよいよ“飛ぶ”のか?」と題して3月2日が会社更生計画の提出期限であることを書きました。

タイ航空はこれまで時間稼ぎをするかのように提出期限を2回延期してきたものの、これ以上は待ったなしというところでやっと同日、抜本的な再建案が破産裁判所に提出されました。

この再建プランによると、事業規模の縮小として以前は83あった航空路線を2025年までに75から80路線に減らし、使用する機種も12から5機種に減らし機体数も86機に減らす。また、かつては29,000人いた従業員を既に21,000人に減らしたが、今度さらに6,000~7,000人減らし、最終的に従業員を14,000から15,000人へと削減してオペレーティングコストを35%削減する。その結果、営業利益での黒字化を達成するというものです。

これを見るとかなりの部分が、1年前に外国人アナリストたちが指摘してきた次の問題点の多くが焦点になっていることがわかります。要するに、放漫経営、強すぎる労働組合、使用機種の取捨選択と削減、不採算路線の切り捨てといった問題点の改善が、今回の再生プランでも取り入れられています。

タイ航空の問題点

a. 多くの問題があるが、特にマネジメントが貧弱であり、かつ経営構造に問題がある。その結果、利益率が低く借金過多にもなっている。(政治家や官僚の利権に基づく介入や労働組合の無理な要求のこと)

b.過去の決算書を見ると、2011年から2019年にかけて、売上はほとんど増えていない。それにも関わらず、販売管理費ばかりが2倍以上に膨らんでいて、売上高に対する比率も3.4%から7.5%に倍増と、経営効率が悪くなっている。

c.たびかさなる赤字で、2011年に627億バーツあった自己資本も、2019年にはわずか117億バーツへと減少。その結果、負債自己資本倍率は2018年時点で12.2にまで高まっている。

d.管理体制が問題で、何を決定するにも政府の承認を取る必要があり、決断が遅すぎる。しかも、労働組合が強すぎて、細かい変更についてもああだこうだと足を引っ張るため、今の航空業界で勝ち残っていく機動力がない。

e.技術的な遅れ。12機種もの航空機を持っている反面、それをちゃんと整備する技術がない。また、A380といった新型機種を導入しても、整備する技術力がないので、A320やA340といった古い機種をいつまでも使っている。これでは、より安全な機種が選ばれる今の顧客ニーズを満たせない。例えば、シンガポール航空の平均機体年齢が7年7カ月に対し、タイ航空のそれは10年である。世界のエアラインとの厳しい競争を勝ち残るには、技術力の向上、新型機の導入が必要である。

f.タイ政府がタイ航空の経営に口を出し過ぎであり、タイ航空は完全な民間企業になるべきである。

g.子会社のLCC、タイスマイルとの住み分けができてない。

h.タイ航空はヨーロッパ直行便ルートが多すぎるので、減らすべきである。また、北米への直行便は持たない方がいい。


ただし、この再建プラン実現のためには500億バーツ(1,800億円)もの追加資金が必要で、特にそのうちの300億バーツ(1,000億円)は6月中に必要というものです。

そしてこれは、これまでに未払いとなっているオペレーティングコストや退職した従業員に支払う退職金等の給与支払いに使われるということで、これからの会社再建のためというよりも、どちらかというと後ろ向きの資金です。

一方、早速タイ航空労働組合はこの再建案に反発しているという次のような記事も出ていて、結局会社が飛んだらすべてお終いだという危機感がどうも薄いような気もします。

As Thai Airways tries to sell new contracts and conditions to its remaining workforce, the labour union of the national carrier is challenging changes to the employment contracts, where Thai Airways employees are being asked to agree to changes as part of the bigger financial rehabilitation program.

会社再生計画の一環として、タイ航空側が従業員に対し雇用契約の条件変更を要求したところ、労働組合側は受け入れなかった

But a union representative says the new contracts are unfair because it includes fewer leave days and shorter holidays. The union has filed a complaint with the Department of Labour Protection and Welfare.

そして組合側は、この雇用条件の変更は有給休暇や休みが減らされていてアンフェアなものであるとして、労働保護福祉局に訴えたのである


所詮私は内部関係者ではないし、こういうマスコミの情報をもとに書くしかないのですが、これらを読む限り、相変わらずタイ航空の根本的な問題の一つである「親方タイ政府」時代の労働組合気質が健在なようです。

そこで思うのは、一体誰がこんな債務超過、すなわち会計上の株価がマイナスとなっている沈没目前の船に1,800億円もの回収不能となる可能性が高い追い銭を出すのかということです。

また、もともとタイ航空の51%の株主が国だったわけで、その出資金がゼロになったということは、国民の税金が無になったということでもあります。

コロナの影響などなかった2019年には史上最高の4,000万人もの外国人観光客がタイにやってきたというのに、それでもタイ航空は大赤字だったわけであり、当時経営に携わっていた現政府にも非があることについては明らかで、さすがに言い逃れはできないと思います。

一方、タクシン首相の時はタイ航空は最高益をたたき出していたわけで、タクシン氏のやり方がいい悪いは別にして、やはり彼のような経営者としての資質がある人が再建の舵取りをしないと、債権者も納得しないのかもしれません。

さらに、タイ航空はこの再建案で債権者に対しても3年間の支払猶予を要求していますが、もしこの資金手当ての目途が立たなければ、当然5月12日の債権者集会で彼らの承認を取るのも難しいだろうと思います。

つまり、タイ航空にとって次のD-デイはあと2か月後にやってくるということです。

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