中国ワクチン以外選択肢がなかったプラユット首相(その2)

実際、タイ政府はこのシノバックの中国製ワクチンを1接種17ドルで買うということですが、これはアストラゼネカの倍以上と結構いい値段です。

こんな世界から敬遠されている中国製ワクチンなのに、タイ政府はシノバックにボッタクリされているような気もしないでもないですが、世界中でワクチン争奪戦が起こっている以上、仕方のないことなのかもしれません。

ワクチン2

“If they fail to deliver a minimum of 20 million vaccines, they better get out — no vaccine, no stay here,” the president said on Saturday during a televised meeting with members of his cabinet and the national COVID-19 task force.

「もしアメリカが2,000万接種分のワクチンをくれなかったら、米軍はフィリピンから出ていけ。ノーワクチン、ノーステイだ」とドゥテルテ大統領はテレビで実況放送中の内閣及びコロナ対策協議会との会議で言い放った。

例えば、このフィリピンのドゥテルテ大統領の話からも、世界のワクチン争奪戦の激しさがわかると思います。大統領はファイザー社からのワクチン供給に関して約束が違うと軍事協定の破棄まで持ち出し、あからさまにアメリカ政府を脅迫しています。

さすがフィリピンのダーティハリーことドゥテルテ大統領だからこそ、アメリカ相手にここまでいえるのだと思います。

一方、タイには米軍基地もないしアメリカとそれほど関係が深くなく、中国ともうまくやっている中庸を行く国であり、アメリカに対しここまでいえるバーゲニングパワーはありません。そして、中国共産党のワクチン外交は、こういうワクチン入手の当てがない国に対して、じわじわとその成果を上げてきつつあるように見えます。

ところで、東南アジアではこれまでタイ、カンボジア、ベトナムといった数少ない国だけが感染拡大を抑え込めていたのですが、本来ならタイもアストラゼネカがタイ国内でワクチンを生産開始するまで待つ余裕があったはずです。

しかし、12月の感染爆発でコロナと最前線で戦う医療関係者たちを感染から守るために、急遽ワクチンが必要になり、中国製ワクチンしか選択肢がなかったのだろうと思うのです。

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実際、この図の黄色の枠で囲ってあるところに書いてあるように、この200万接種は第一線でコロナ感染者と向かい合う医療従事者、そして地方でボランティアとして医療活動を行う人たちへの接種を最優先にしています。

従って、もし今回の感染爆発さえなかったら、つい最近までローカルでの新規感染がほぼゼロであったタイは、本来、この200万接種分の緊急購入は要らなかったのであり、当初の予定通り、5月に1,300万接種分のワクチンを英国アストラゼネカから購入し、その後はパトゥンタニの自国工場で大量生産されるワクチンを順次国民に接種していけばよかったはずです。

そういう意味では、日本のように1接種25ドルもするファイザーやモデルナのワクチンを1億接種分も予約でき、資金的にも余裕で買える恵まれた国の人が、今回の中国シノバックのワクチン購入の決断について、プラユット首相やタイ政府を批判したりするのは間違いかもしれません。現実は、タイ政府はこの想定外の緊急事態の中、他に選択肢はなかったのかもしれないと思うからです。

最後になりますが、私も6年も続いた軍事政権はもう終わらせた方がいいと思っている方で、現政権支持者ではありません。しかし、少なくとも以下のプラユット首相自身のコメントからわかるように、前回のフルロックダウンでタイ経済や庶民の生活がどれほど大きなダメージを受けたか十分認識していて、今回はタイ全土のフルロックダウンを何とか避けようと努力しているし、今は力による国内の統制がうまい軍事政権であってよかったのかもしれません。

また、今回のシノバック購入についてうがった見方をする人もいるかもしれませんが、中国政府との裏取引などしている時間はなかっただろうと思うのです。

ワクチン4

Gen Prayut also said his government was assessing the situation on a daily basis and ministers were mindful of the economic damage from overly strict containment measures.

“We don’t want to lock down the entire country because we know what the problems are, so can you all lock down yourselves?” he said. 

プラユット首相:「タイ政府は毎日感染拡大の状況を調査しているし、各大臣も厳格な規制が経済にどれだけダメージを与えるのか十分認識している。そして、我々の誰も国全体をロックダウンになどしたくないし、そんなことをしたらどんな大きな問題が起こるかもわかっている。だから、国民にはせめて自分自身をロックダウンして、しばらく自宅で自己隔離してほしい」

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