10年に1度の投売りが始まった!

先月号で「完成在庫の積上りに戦々恐々の日系デベロッパー」と書いたが、日系に限らず現地デベロッパー各社は、タイ中央銀行による投資及び転売目的の投機的購入に対する与信基準引締めや中国人バイヤーの激減で、新規プロジェクトの売出に慎重になっており、今は完成在庫の一掃に躍起になっている。

一方で、本誌2月号では「待つも相場なり」と題して、高騰した用地取得をしてこれから売り出される新規プロジェクトにはもう投資妙味がないのではないか。むしろ、建設中のプロジェクトの購入予約権や中古のリセールが投売りで出てくるのを待って買った方がいい、と筆者は書いた。

しかし、ここにきてちょっと状況が変わってきたのである。すなわち、今デベロッパーは、竣工しても引き取り手のいなくなった大量の完成在庫を抱えつつあり、その結果、大幅値引きで在庫処分を始めたというのだ。

6月に入り、「今、コンドミニアム市場ではデベロッパーの完成在庫一掃セールが繰り広げられていて、値引が2割、3割とここ10年で最大の投売りが行われている」というショッキングなニュースが現地の経済新聞、ターンセータギットに載った。

そうなれば、リセール市場で出てくる投売りを買うより、むしろこういった新築の完成在庫をデベロッパーと直接交渉して底値買いするのにも投資妙味が出てくるのである。

つまり、こう考えればいい。一般的にプレビルドで価格が一番安いのはプリセール時であるが、既存購入者が中国人などの外国人の場合、竣工前に既に25%のダウンペイメントを支払っていることが多い。その彼らが購入を断念した時に何とかその一部でも取り返そうとするのが購入予約権のリセール(転売)による投売りである。しかしそれでもキャンセルされてデベロッパーに戻されたものが増えているということは、結局転売に失敗し、それまでの前払金を全て放棄したことになる。

言い換えれば、デベロッパーはそのキャンセルユニットを2割、3割の値引きで再販しても、その値引きのかなりの部分を既に前購入者から回収しているということなのだ。

ただし、タイ人購入者の場合、ダウンペイメントは5%から15%が一般的なので、全てのキャンセルが25%もの手付金を放棄しているというわけではない。しかし、今のような時期こそ、住宅ローンなど借りる必要がなく即金で完成在庫を引き取れる我々のような外国人は、デベロッパーにとってのどから手が出るほど欲しい顧客であり、有望な物件を選んで直接デベロッパーと交渉していけば、特別値引きを取れる可能性は非常に高い。

ここに添付したのは、不動産情報サービス会社、CBREによるバンコク中心部で販売中のプロジェクトの価格推移グラフである。チャオプラヤー川沿いのプロジェクトの落ち込みが激しいが、CBD(中心部ビジネス街)であるシーロム・サートーンも価格が下がり始めている。日本人投資家に人気のスクムビットもそれまで続いてきた価格上昇の勢いがなくなり、第2四半期には下降に転じている可能性も高い。

ただし、今、不動産購入を焦る必要はない。中央銀行の融資規制の影響で住宅ローンの貸出しは昨年比3割減になる見込という報告が出ているし、さらに、米中貿易戦争による中国景気の悪化や人民元安、政府の海外送金規制により、購買力が相当弱まった結果、昨年比で半減してしまった中国人バイヤーなど、少なくとも今年一杯はバンコクのコンドミニアム市場は混迷と低迷の悪循環から抜け出せないと筆者は考えているからだ。

追加コメント:

2020年の2月時点にあっても、2割、3割という値引きだけでなく、どのユニットも同じワンプライスにして完成在庫を一掃しようとするデベロッパーも出てきていて、CBDやダウンタウンでの販売在庫一掃にはまだ時間がかかりそうである。

一方で、オレンジ、ピンク、イエローに代表される新線沿線での、ミドルクラスの実需向け廉価物件の新規供給は増えているが、それでも全体の供給数という意味では激減しつつある。少なくとも2020年はじっくりと時間をかけて底値買いに徹していくべきである。

追加更新:

筆者の連載はこの回をもって終わったが、2021年5月の現時点のバンコクのコンドミニアム市場は、その後のコロナ禍によってさらに大きな波乱となっていて、全く出口の見えない長期低迷が続いている。現在、筆者がいえるのは、「休むも相場なり」と決め込んで成り行きを見るべき時だということである。

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