MM2H
中国人がタイでコンドミニアムを買い漁っていた2017年、実はマレーシアでも同様のことが起こっていました。

マレーシアは以前「東南アジアでリタイア、人気リゾートベスト3(その3)」で書いたように、中国語が通用すること、不動産価格が安くミドルクラスでも容易に買えること、そして何よりMM2Hビザに魅力があったことから、多くの中国人ミドルクラスが自己居住を目的にセカンドホームとして住宅不動産を買ったわけです。

マレーシア:
ラグジュアリーコンドミニアムは、他のアセアン諸国に比べて価格が非常に安い。しかも、マレーシアで自己居住用不売動産を購入し、かつ生活費をマレーシアで働かなくても自己資金で賄えるという証明ができれば、マルチエントリーが可能な10年間のビザを発行してもらえるというマレーシア独自のプログラム、MM2H(Malaysia My Seconf Home)があり、東南アジアでも特に人気がある。また、このビザを取れば、同伴家族についても同じく滞在許可が出る。

ところが、最近、マレーシア政府はこのMM2Hビザの発行を凍結したのです。実は昨年の9月から11月の間も、9割のMM2Hビザ申請が却下されるという事件が起こったのですが、今回は完全に凍結です。

MM2H2
政府はこのビザの廃止を正式にアナウンスしたわけではありませんが、少なくとも当面はこのビザで移住することができなくなったわけで、特に中国政府の干渉やデモによる混乱を嫌ってマレーシアに移住しようとしていた香港の中国人などは、行き場をなくしてショックを受けているという記事もあります。


マレーシア
また、英字紙The Nationによると、既にマレーシアに移住していた中国人社会に与えた影響も大きく、MM2Hの凍結で中国人の新規購入がほとんどなくなったことや、コロナの感染を恐れて中国に戻った人もいることから、中国人の多いボホールなどの住宅は値崩れを起こしているそうです

それどころか、マレーシアに見切りをつけて、購入した住宅を損切りしてでも手放す中国人も出てきているということですが、
なぜこんなことが起こっているかというと、マレーシアで不動産を買った中国人は、その生活環境やライフスタイル、子供たちの教育のことを考えて、実際に自分たちで住む目的の人が多かったからです。

一方、タイの不動産を購入した中国人は、もともと値上り益や賃貸で利回り収入を得る投資目的の人が多く、自分で住まないのでたとえ将来、ロングステイビザや投資ビザが発行されなくなっても、不動産市場に与える影響はそれほど大きくないと思います。

もっとも、タイのコンドミニアム市場も値下りが続いているのですが、マレーシアとはちょっと事情が違っていて、GDPがマイナス8%というアセアンでも最悪の経済状況や供給過剰による販売在庫の積み上りが主な原因です。


米中戦争
ところで、興味深いのは、中国人がマレーシアを敬遠し始めた理由の一つに、南シナ海での中国の勝手な振る舞いに対して、マレーシア国民が嫌中意識を持ち始めていることがあります。さらに、最近の米中摩擦もあります。彼らは最悪米中戦争が起こった場合、マレーシアは米国側につくと考えていて、その場合、彼らは敵国民となり、ここに住んでいると危ないと考え始めているようです。あまり不動産投資とは関係ないようにも思えますが、カントリーリスクというやつです。

そういう意味では、南シナ海をめぐってフィリピンやベトナムも嫌中意識があるので、中国人はたとえ自分で住まないにしても、これらの国での不動産投資は積極的には買わないように思います。

ところで、ではタイは大丈夫かというと、タイも中国側にはつかないでしょうが、この図で見てもわかるように、タイには米軍基地もないし、今のところ、特に嫌中意識もないことから、フィリピンやシンガポール、マレーシアよりも中立的な立場でいられます。

従って、中国のJuwai.comによれば、今でも中国人投資家の間ではタイの不動産が一番人気があります。
また、タイの不動産業界もそれを知っていて、中国人投資家が戻ってくるのを心待ちにしていることもあり、タイとマレーシアではかなり状況が違うようです。