市況低迷期間3

そもそも発表の中の「
今後安定的な成長が見込まれる SA 事業に新たに参画します」のくだりは、この業界のことを知っていれば、かなり苦しい理屈だとすぐにわかります。

たとえば、サービスアパートメント市場に関するこのCBREのレポートを見ても、2013年ごろをピークに需要も供給も縮小を続けているのがわかります。

そして、その主たる原因が、デベロッパーがコンドミニアムを大量供給し、それらが
賃貸市場に流れ込んだ結果、サービスアパート業界とバッティングすることになり、廃業したり撤退するところが出てきているからです。

しかも、以前に「10万ユニットの空室がバンコク賃貸市場で猛威を振るう」で書いたように、今も相当な空室があるコンドミニアム賃貸物件のことを考えると、この状況は少なくともあと5年ぐらいは続くと思います。

そんな中、コロナによる外国人入国規制で新規の駐在員需要や観光客需要はほぼないに等しいこの時期に、オペレーターであるアスコット社もなぜ5つもの物件の
運用を引き受けるつもりになったのか、理解に苦しみます。

もしかすると、ターンオーバーレント(固定賃料でなく売上高比例賃料)や、3年目か5年目あたりにブレーククローズ(一方的解約権)といった特殊な契約内容になっているのかもしれませんが...。

しかし、それにしても何でわざわざこんな時期に、外国人観光客がメインのナナをオープンさせたのかと思うと同時に、向こう数年は入居者募集で相当苦戦するのではないかとも思います。

市況低迷期間4
そこでちょっと調べてみたのですが、私の方でわかったのは、この5つのサービスアパートの内、少なくともサトーンとトンローの大型ハイライズについては、アナンダはもともとアイディオのコンドミニアムを開発するつもりで用地取得していたようです。

しかし、2018年後半から崩れ始めたCBDの高額物件市場で、新たにコンドミニアムを開発しても販売が難しいことから、それならサービスアパートにしようという苦肉の策だったのではないかと思います。

もっとも、本来、何百室もある大型コンドミニアムとして開発するはずだったのを、サービスアパートメントに転用するのですから、ちょっと無理があるような気もするのですが...。

従って、「今後安定的な成長が見込まれる SA 事業に新たに参画します」というよりも、むしろ消極的な理由で仕方がなく始めた新規事業、というのが本当のところなのだろう思います。

ちなみに、これからも長期間続くと予想される不動産不況に対し、デベロッパー各社はそれぞれ違った危機回避の対応をしつつありますが、
一旦取得した開発用地を用途変更してでも無理して開発しようとするアナンダ・三井に対し、開発はもう諦めて今のうちに用地を転売処分しようとしているのが、大手のプルクサーです。

プルクサーの場合、短期的には損切りになるのかもしれません。しかし、
来年以降、不動産市場がどこまで落ち込んでいくのか予想もつかない現状では、無理に開発リスクを取らない方が資金繰りも楽になるので、案外正解なのかもしれません。